障害等級の判断基準とポイント
目次
精神の障害で、障害等級に該当するかどうかは、症状の経過による日常生活活動の状況から判断すると書かれています。
この症状の経過とは、具体的症状の程度と経過寛解前なのか寛解後、継続期・維持期なのかといった治療経過を意味しており、残存している現在の具体的症状やその程度により日常生活活動能力が判断されます。
治療経過と症状の程度
精神疾患の治療は、診断を受けてから回復するまでに時間がかかるのが一般的で、その治療過程は、急性期・継続期・維持期の大きく3つの段階に分けられます。
- 急性期治療(症状が最も重くつらい時期における治療)
- 継続期治療(寛解(症状がすべて消えた)後、再燃を予防するための治療)
- 維持期治療(再発の予防のための治療)
継続期や維持期にある方については、具体的症状やその程度、再燃・再発の頻度などから日常生活能力を判断し、障害年金を支給すべきか否かが決定されます。
寛解状態(症状が消失している)にある方が、社会復帰が困難であることを理由に障害年金を受給することは難しいでしょう。
日常生活能力
日常生活能力を判定する上で重要な項目は以下となります。
これらを総合的に考慮した上で、その障害状態が国民年金法施行令別表、厚生年金保険法施行令別表第1・第2に定める程度の障害等級に該当すると認められた場合に障害年金の支給が認められます。
日常生活能力の判定 | 7種類の生活の場面を4段階で判定 (俗称ABCD評価) |
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日常生活能力の程度 | 総合的な重症度を5段階で判定 |
同居の有無 | 家族構成、入院・施設、援助者の有無など |
就労の有無 | 一般就労、作業所、労働時間及び日数など |
日常生活能力の判定
日常生活能力の程度は、以下のような場面で自発的に行えるかどうか、あるいは助言や指導があればできるかという観点からそれぞれ評価され、それらを総合的に評価することにより判断されます。
日常生活能力の”判定”を軽い方から1〜4点と評価して、これらの平均値が障害等級を判断する際の参考とされています。
食事
配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができるなど。
1 | できる | 栄養のバランスを考えて適当量の食事を適時に摂ることができる。(外食、自炊、家族・施設からの提供を問わない) |
2 | 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする | だいたいは自主的に適当量の食事を栄養のバランスを考え適時に摂ることができるが、時に食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。 |
3 | 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる | 1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、経常的な助言や指導を必要とする。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。 |
身辺の清潔保持
洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど。
1 | できる | 洗面、整髪、ヒゲ剃り、入浴、着替え等の身体の清潔を保つことが自主的に問題なく行える。必要に応じて(週に1回くらいは)、自主的に掃除や片付けができる。また、TPO(時間、場所、状況)に合った服装ができる。 |
2 | 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする | 身体の清潔を保つことが、ある程度自主的に行える。回数は少ないが、だいたいは自室の清掃や片付けが自主的に行える。身体の清潔を保つためには、週1回程度の助言や指導を必要とする。 |
3 | 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる | 身体の清潔を保つためには、経常的な助言や指導を必要とする。自室の清掃や片付けを自主的にはせず、いつも部屋が乱雑になるため、経常的な助言や指導を必要とする。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 常時支援をしても身体の清潔を保つことができなかったり、自室の清掃や片付けをしないか、できない。 |
金銭管理と買い物
金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。
1 | できる | 金銭を独力で適切に管理し、1ヶ月程度のやりくりが自分でできる。また、1人で自主的に計画的な買い物ができる。 |
2 | おおむねできるが時には助言や指導を必要とする | 1週間程度のやりくりはだいたい自分でできるが、時に収入を超える出費をしてしまうため、時として助言や指導を必要とする。 |
3 | 助言や指導があればできる | 1人では金銭の管理が難しいため、3〜4日に一度手渡して買い物に付き合うなど、経常的な援助を必要とする。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 持っているお金をすぐに使ってしまうなど、金銭の管理が自分ではできない。あるいは行おうとしない。 |
通院と服薬
規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど。
1 | できる | 通院や服薬の必要性を理解し、自発的かつ規則的に通院・服薬ができる。また、病状や副作用について、主治医に伝えることができる。 |
2 | おおむねできるが時には助言や指導を必要とする | 自発的な通院・服薬はできるものの、時に病院に行かなかったり、薬の飲み忘れがある(週に2回以上)ので、助言や指導を必要とする。 |
3 | 助言や指導があればできる | 飲み忘れや、飲み方の間違い、拒薬、大量服薬をすることがしばしばあるため、経常的な援助を必要とする。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 常時の援助をしても通院・服薬をしないか、できない。 |
他人との意思伝達および対人関係
他人の話を聞く。自分の意思を相手に伝える。集団的行動ができるなど。
1 | できる | 近所、仕事場等で、挨拶など最低限の人付き合いが自主的に問題なくできる。必要に応じて、誰に対しても自分から話せる。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができる。 |
2 | おおむねできるが時には助言や指導を必要とする | 最低限の人付き合いはできるものの、コミュニケーションが挨拶や事務的なことにとどまりがちで、友人を自分からつくり、継続して付き合うには、時として助言や指導を必要とする。あるいは、他者の行動に合わせられず、助言がなければ、周囲に配慮を欠いた行動をとることがある。 |
3 | 助言や指導があればできる | 他者とのコミュニケーションがほとんどできず、近所や集団から孤立しがちである。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができず、あるいは周囲への配慮を欠いた行動がたびたびあるため、助言や指導を必要とする。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 助言や指導をしても他者とコミュニケーションができないか、あるいはしようとしない。また、隣近所・集団との付き合い・他者との協調性が見られず、友人等との付き合いがほとんどなく、孤立している。 |
身辺の安全保持および危機対応
事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
1 | できる | 道具や乗り物などの危険性を理解・認識しており、事故等がないよう適切な使い方・利用ができる(例えば、刃物を自分や他人に危険がないように使用する、走っている車の前に飛び出さない、など)。また、通常と異なる事態となった時(例えば家事や地震など)に他人に援助を求めたり指導に従って行動するなど、適正に対応することができる。 |
2 | おおむねできるが時には助言や指導を必要とする | 道具や乗り物などの危険性を理解・認識しているが、時々適切な使い方・利用ができないことがある(例えば、ガスコンロの火を消し忘れる、使用した刃物を片付けるなどの配慮や行動を忘れる)。また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり指示に従って行動できない時がある。 |
3 | 助言や指導があればできる | 道具や乗り物などの危険性を十分に理解・認識できておらず、それらの使用・利用において、危険に注意を払うことができなかったり、頻回に忘れてしまう。また、通常と異なる事態となった時に、パニックになり、他人に援助を求めたり、指示に従って行動するなど、適正に対応することができないことが多い。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 道具や乗り物などの危険性を理解・認識しておらず、周囲の助言や指導があっても、適切な使い方・利用ができない。あるいはしようとしない。また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり、指示に従って行動するなど、適正に対応することができない。 |
社会性
銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
1 | できる | 社会生活に必要な手続き(例えば行政機関の各種届出や銀行での金銭の出し入れ等)や公共施設・交通機関の利用にあたって、基本的なルール(常態化された約束事や手順)を理解し、周囲の状況に合わせて適切に行動できる。 |
2 | おおむねできるが時には助言や指導を必要とする | 社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用について、習慣化されたものであれば、各々の目的や基本的なルール、周囲の状況に合わせた行動がおおむねできる。だが、急にルールが変わったりすると、適正に対応することができないことがある。 |
3 | 助言や指導があればできる | 社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、各々の目的や基本的なルールの理解が不十分であり、経常的な助言や指導がなければ、ルールを守り、周囲の状況に合わせた行動ができない。 |
4 | 助言や指導をしてもできない 若しくは行わない | 社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、その目的や基本的なルールを理解できない、あるいはしようとしない。そのため、助言・指導などの支援をしても、適切な行動ができない、あるいはしようとしない。 |
日常生活能力の程度
日常生活能力の程度は(1)〜(5)までの5段階で評価されますが、これについてもどこに○が付いていれば2級あるいは3級というような明確な基準はありません。
あくまで参考であり、たとえ(3)に○が付されている場合であっても、県によっては半数以上、多いところでは93%の方が等級非該当とされているところもあります。
また、(5)に○が付されていた場合であっても等級非該当とされたケースもあります。
1 | 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。 |
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2 | 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。 |
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3 | 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。 |
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4 | 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、 多くの援助が必要である。 |
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5 | 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。 |
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同居者の有無
同居者の有無も、日常生活能力を判断する際に重視されるポイントです。 過去の事例では、「一人暮らしできていること」を理由に、請求人の障害状態は障害等級に該当しないとしたものもあります。
就労の有無
障害認定基準でいう障害等級2級の状態とは、就労を前提としていないため、就労している場合は2級には該当しないと思われがちですが、お仕事をされているような場合でも2級に認定される場合もあります。 雇用形態(かなり限定されますが)や職種、労働時間や援助者の有無などを総合的に判断した上で決定されます。就労している事実だけで、障害年金の支給可否が判断されることはありません。