増税延期で低年金支援 給付1年半、先送り検討
政府は21日、年金が少ない人への給付の充実策や年金をもらえない人を減らす対策の導入を予定より1年半先送りする検討に入った。2015年10月の消費税率の10%への引き上げにあわせて準備していたが、必要な財源のめどが立たなくなった。安倍晋三首相が消費再増税を17年4月に先送りしたことの余波が社会保障制度の改革にも及ぶことになる。
麻生太郎副総理・財務相は同日の閣議後の記者会見で「消費税の増収分がないので当然、延期する以上は社会保障の充実も見直さざるを得ない。延期中は税率8%時の社会保障の充実の範囲の中で優先順位をつけてやっていかざるを得ない」との考えを示した。
塩崎恭久厚生労働相も閣議後の記者会見で、年金の充実策について「現行の法律は消費税の引き上げが18カ月延期されれば、自動的に18カ月間延期されることになっている。今後の予算編成過程で検討する」と述べた。
年金の充実策の柱の一つは年金の受給額が少ない高齢者に月5000円を支給する年金生活者支援給付金だ。対象者は障害年金の受給者らも合わせて約790万人で、15年度は4カ月分の1900億円を見込んでいた。
もう一つは年金を受け取るために必要な保険料の納付期間の短縮だ。これまでの25年を10年に縮めて、年金をもらえない人を減らす。15年度は3カ月分で75億円かかり、ともに消費再増税の増収分を充てる計画だった。
年金の充実は年間ベースにならすと6000億円近い財源が必要になる。政府・与党内では来月の総選挙を見すえて、赤字国債の発行で財源を確保して来年10月に実施する案も浮上していた。
厚生労働省や財務省は財政の悪化を招くとして反対しており、消費再増税の先送りに併せて、延期する方向で検討することになった。待機児童の解消など子育て支援は予定通り来年4月から実施する。