初診日の考え方
最終更新日:2019年11月13日
手続きで最初に取り掛かるのが初診日の確認です。初診日について間違った認識や、年金事務所から言われるがままに初診日を決めてしまうと、受け取れる金額が少なくなったり、思わぬ不利益を被ることがあります。ここでは初診日の考え方について解説しています。
目次

初診日についてよく理解しておかないと、障害厚生年金を請求出来た筈なのに障害基礎年金の請求になってしまったり、遡り請求出来た筈なのに出来なかったなんてことも…。


以下、初診日の考え方についてまとめています。
初診日の定義
初診日とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいますが、初診日を確定する上で、まず、この定義をしっかり理解しておく必要があります。
医師とは
まず、医師の定義ですが、はじめて診療を受けた医師とは、「必ずしもその傷病に関する診療科や専門医でなくてもよい」とされています。


診療とは
「診療」とは、医師による「診察行為」「治療行為」のほか、「療養に関する指示を受ける」ことも含まれるとされています。






事例ごとの初診日の考え方

- 初めて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
- 同一の傷病で転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
- 過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
- 健康診断により異常が発見され、療養に関する指示を受けた場合は健康診断日
- 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
- 障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
- 先天性の知的障害は出生日
- 発達障害(アスペルガー症候群やADHDなど)は、関連ある症状があって初めて診療を受けた日

初めて診療を受けた日
あなたがこれまでに治療を受けた病院が一つしかなければその病院に初めてかかった日が初診日となりますが、精神科や心療内科を受診する前に内科や婦人科を受診し、検査してもらうも何らの異常もなく、そこでやっと医師から精神科等の受診を勧められるというケースは少なくありません。
初診日とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日とされており、必ずしも専門医でなければならない訳ではなく、専門医にかかるよう指示があった場合も含むとされていますので、たとえば、最初に不眠や不安感、全般的な体調不良を訴えて内科にかかったり、幻聴などを訴えて耳鼻科にかかった場合などは、それら診療科を初めて受診した日、あるいは検査の結果、何らの異常もなく、専門医にかかるよう勧められた日が初診日になります。


それに医師が必ずしも障害年金に詳しいとは限らないから、しっかり理解しておく必要があるんだ。
同一の傷病で転医があった場合
ドクターショッピングや転院を繰り返しているような方の場合、この初診日が一体いつになるのかが問題となる場合があります。
精神科から精神科への転医
例えば、平成13年7月に不安(パニック)障害と診断され、A精神科受診、その後転院を繰り返しており、各病院それぞれ診断名が違っているようなケースです。このようなケースでも(うつ病、パニック障害、発達障害など)、各医療機関で診断された傷病名は同一傷病として扱われますので、このケースですと、不安障害とうつ病は一連の精神症状として扱われる事になり、不安障害と診断された医療機関を初めて受診した日が初診日となります。


このケースでは、社会的治癒とか考えなければ平成13年7月になるよ。


でも僕は「パニック障害に起因するうつ病」として扱われている事例の中にも場合によっては「単独のうつ病」として請求してもいいんじゃないかなと思うこともある。まぁでも、それだけの理論武装が必要になるだろうけどね。ニヤリ。

発達障害者はその特性上うつ病などの精神病にかかりやすい
— ばん=ごはん@発達障害ADHD (@vahtht) 2019年9月18日
発達障害とうつ病の因果関係はエビデンスも豊富な為、発達障害者がうつ病になった場合その初診日は発達障害の初診日まで遡り適応される。つまり未成年時に診断された発達障害者はその後うつ病になっても初診日は未成年時で固定である#adhd
他診療科(内科等)から精神科への転医
精神疾患などについては前駆症状(たとえば、最初に不眠や不安感、全般的な体調不良を訴えて内科にかかったり、幻聴などを訴えて耳鼻科にかかった場合)で医療機関を受診することもあるでしょう。その場合、その症状が精神疾患の前駆症状と判断されれば、その日が初診日になります。そのため、必ずしも、専門の精神科に受診した日が初診日になるというわけではありません。

医師が関連性ありと認めてくれれば楽だけど、そうじゃない場合が大変なんだ。



前駆症状の受診日が初診日として認定された事例
統合失調症の初診日であると主張する平成3年8月19日は、びまん性脱毛症によって皮膚科の診療を受けた日であって、一般的にいえば、この傷病と診断された後、症状の進行によって統合失調症の確定診断に至るのが通常の事実推移の過程であるということはできないから、これをもって統合失調症の初診日であるということはできない。
しかしながら、請求人の上記びまん性脱毛は、不潔恐怖などの神経的な精神症状に由来する過度の洗髪の結果であることが窺われるところ、このような症状が統合失調症の前駆症状として現れることは往々みられるところであり、これに加えて、その当時から統合失調症と診断されるに至るまでの時期において請求人の生活態度に認められる精神的な隔たりの持続、そのような時期を経て最終的に統合失調症と診断されていることから回顧的に見れば、上記びまん性脱毛症は統合失調症の前駆症状としての精神症状を意味するものであったと推定する事が妥当である。
この受診から統合失調症の診断が下されるまでに約8年の歳月が経過しているが、一般に、統合失調症について前駆症状の発生から確定診断に至るまでこの程度の期間が経過することはまれとはいえないから、この点も前期推定を妨げるものではない。
以上の次第で、統合失調症の初診日は20歳到達前の平成3年8月にあるものと認められる。
(平成16年2月27日裁決『社会保険審査会裁決集(国民年金関係)』平成16年版)
過去の傷病が治癒し、同一傷病で再度発症
社会的治癒の基本的な考え方
治療の結果、ひとまず寛解に至ったものの、しばらくして再発してしまったような場合、最初の受診を初診日とすることで、請求者が不利益を受けるケースがあります。最初の受診日が国民年金(20歳到達前など)で、その後何十年も厚生年金に加入していたような場合です。
このような場合にまで最初の受診日を初診日としてしまうと、長期間にわたって厚生年金保険料を納めていたにも関わらず、障害厚生年金の請求ができないという事態に陥ってしまうこともあります。そこで、このように請求者が不利にならないために、前の傷病と後の傷病を分けて取り扱う考え方を社会的治癒といいます。







社会的治癒の例外
医師の診察を受け、薬治下にある場合は、一般社会における労働に従事している状態にあっても、原則的には社会的治癒とは認められません。さらに、自己判断による治療中断についても社会的治癒があったと認められることはありません。

例えば、働いたり育児や家事をしながら30年近く精神科に通っていて、空白期間もなくて、服薬もしていたら社会的治癒はぜーったいに絶対に認められることはなくて、初診日はやっぱり30年前になるんですか?どうしてもどうしても認められないんですか?

空白期間が全くなくて、ずっと服薬を続けているような場合でも社会的治癒が認められるケースはあるんだよ。

先生のことだからそう言うと思ってました!先生があーそうですかで納得するわけないですもんね!

定期的に通院し、服薬もしていたけど社会的治癒が認められた事例です。
投薬中だが「社会的治癒」を認定した事例
請求人には、初回入院(昭和55年3月)から再入院(平成5年10月)までの10数年のうち約10年間の就労期間があり、特に再入院の直前の2年2か月の期間は継続して同一事業所に勤務していたことが認められること、再発防止に対する抗精神病薬の維持量投与の有効性が確認されていること、投薬量は請求人にとっての維持量であることから、社会的治癒期間があったものと認め、再発、入院した平成5年10月2日を初診日として認めることとする。
(平成8年10月31日裁決『社会保険審査会裁決集(厚生年金保険関係)平成8年版』)




初診日を変える3つの方法。
— しっぽのないぶた (@notailpig2kyuu) 2017年9月15日
①医学的に問題がない生活(通院や服薬が最低限の生活)を送っていたという医師の意見書+社会的に問題がない生活(配慮を必要としない生活)を送っていたという第三者の意見書
②医師と相談して初診日を動かす。
③新しい精神科に行って、過去の通院歴を隠し通す。
①が上記の社会的治癒によって初診日を変更する方法です。②については、初診の証明が取れない場合に行われる場合もある(実際に年金機構もそのようにアドバイスすることもある)ようですが、③を含めてこうした請求を行ったとしても、審査過程で年金機構からの確認照会(医療機関へのカルテ開示要請)があった場合、「不正請求」なんて言われることもあるので注意が必要です。
相当因果関係が問題となるケース
相当因果関係とは、前の疾病や負傷と後の疾病の関係性をいいます。前の疾病や負傷がなかったならば、後の疾病は起こらないであろうという考え方です。前駆症状とは考え方が異なります。
障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病(起因する疾病)があるときは、最初の傷病(起因する疾病)ではじめて受診した日が初診日となります。
つまり、相当因果関係がある場合には、前後を通じて1つの疾病とみることになります。逆に、相当因果関係が認められない場合は、前の傷病と後の疾病はそれぞれ別の傷病として扱います。


ちなみに、精神の場合だと、事故または脳血管疾患によって精神障害が引き起こされたような場合は、相当因果関係ありとして取り扱われます。発達障害とうつ病、パニック障害とうつ病なんかも相当因果関係が認められます。
脳梗塞と高次脳機能障害
平成10年5月に1度目の脳梗塞、平成17年3月に2度目の脳梗塞、平成17年8月に3度目の脳梗塞を発症しました。残存した障害は高次脳機能障害です。精神病棟を退院する見込みもなく障害の状態が継続しているため、精神の障害で障害年金を請求したところ、初診日は平成10年5月、事後重症2級として認められました。その後、改めて、初診日を3度目の脳梗塞を発症した平成17年8月として障害認定日請求を行います。
平成17年8月を初診日とする根拠になったのは、カルテや他院への紹介状の記載内容、行動の障害が出現した日が3度目の脳梗塞の入院中であったこと、2度目の脳梗塞の入院時の診療録には行動の障害の記載が一切なかったこと等です。1度目〜3度目の脳梗塞の全診療録含め根拠書類を全て提出したところ、初診日が平成17年8月として認められました。
すなわち、1度目と2度目の脳梗塞と高次脳機能障害との間に相当因果関係はなしとされ、3度目の脳梗塞と高次脳機能障害に相当因果関係があると認められたということです。
線維筋痛症と強皮症の相当因果関係
平成20年頃より全身(四肢、体幹、顔面など)に疼痛が出現し、労務不能な程に痛みが強くなり、内科を受診。強皮症の疑いとして治療を開始しました。
その翌月には同院精神科を受診し、適応障害と診断。休職の指示を受けます。内科と精神科が連携して治療を進めたものの、改善が見られず転医。そこではうつ病と線維筋痛症と診断され、さらに数か月後に同院リウマチ科で強皮症であることも確定しました。
線維筋痛症と強皮症の初診日は内科受診時、うつ病は精神科受診時として障害給付を請求。線維筋痛症とうつ病については障害認定日請求し、強皮症は事後重症請求のみに追加しました。
結果、主張した初診日が認められ、障害認定日、請求日ともに2級と決定された。
線維筋痛症など疼痛が強い傷病の場合、精神疾患を併発していることが多く、これを単体の「うつ病」として見るのか「線維筋痛症に起因する抑鬱状態」と見るのか、保険者でも評価が定まっていないように見受けられます。



医学的なエビデンス(根拠)が問題▼
https://t.co/vuqSnNg5Kn
— ryuji nakagane (@ryuji_nakagane) 2019年11月4日
年金の支給が、疾患の初診日ではなく、確定診断日で出して欲しいと、国が変更してきているという複数の社労士証言。
僕の周りからも聞こえてきていました。
たまにあるんです、なんかこっそり変わること。現在ざわついています。
発達障害、知的障害における初診日
アスペルガー障害を含む広汎性発達障害については、医学的には先天性であるとされていますが、実際に関連ある症状があって初めて診療を受けた日を初診とします。また、先天性疾患(幼少時に発症したものを含む)は、基本的に発症時点以後に受診した日が初診日となります。
まとめ
障害年金の請求で最初に取り掛かることが「初診日の確認」です。はじめに確定したはずの初診日が、手続きが進んだ段階で変わってしまうと障害認定日にも影響を与えますし、診断書修正などの手間も生じてきます。
初診日でつまずいて請求が難しいようなケースでも、時に、審査請求、再審査請求と進み、最終的に受給権を得られるケースはあります。
障害等級ばかりに注目してしまいがちな障害年金ですが、初診日次第で受給権が得られるかどうかや、請求できる障害年金の種類、支給額などが変わることもありますので、請求を進めていく際は、初診日についてよく理解・検討した上で進めるようにしてください。




じゃ、龍馬先生お疲れ様でした。

ちょ、おい、待てってば、待ってくれ〜…。
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