初診が海外にあるような場合でも、初診日要件や保険料納付要件をクリアしなければなりません。ここでは、初診が海外にある場合に注意しなければならないポイントを説明しています。

初診が海外にあるような場合、①初診日に国民年金に任意加入あるいは厚生年金に加入していたか、②初診日の証明が取れるかという2つの点に注意しなければなりません。それぞれ確認していきましょう。

初診日の年金加入要件

そもそも、海外に移住(国外転出届を提出)すると、60歳未満でも年金の加入義務がなくなります。たとえ日本国籍でも強制加入の対象外になり、保険料の納付義務もなくなります。すなわち、海外居住中に初診日のある事故や病気が原因で障害が残った場合、障害年金を請求できません。そこで任意加入という方法があります。

国民年金の海外任意加入

海外に居住するようになったとき、住民票の転出手続きをすると、国民年金第1号被保険者は国民年金をやめることになります。

引き続き国民年金の加入を希望するときは、任意加入の手続きが必要です。尚、20歳以上65歳未満の方が対象となります。但し、過去に遡って加入することはできません。

日本企業から海外赴任しているようなケース(厚生年金に加入している)なら厚生年金に加入してるだろうから問題ありませんが、現地企業で働いている期間(厚生年金の被保険者期間ではない)に初診日がある場合は国民年金への任意加入をしておかない限り請求は出来ません。

帰国後の初診の場合

海外在住期間に任意加入していなかった方でも、海外在住期間中に医療機関を受診せず、帰国後に初めて医療機関を受診したという場合は従来通り、国民年金の被保険者期間中に初診日があるため、納付要件を満たす事で障害基礎年金の請求が可能です。勿論、厚生年金の被保険者であれば障害厚生年金の請求となります。納付要件を確認する際は、海外在住期間はそもそも「被保険者期間」に該当しませんので、海外在住期間を除いた被保険者期間を基礎に納付要件を確認することになります。

帰国した後に再発した場合の初診日

海外の医療機関での治療の結果、ひとまず寛解に至ったものの、帰国後しばらくして再発してしまったような場合、海外の医療機関を初めて受診した日を初診日にしてしまうと、国民年金に任意加入していなかったり、厚生年金にも加入していなければ請求自体が出来なくなってしまいます。

このような場合にまで最初の受診日を初診日としてしまうと、長期間にわたって厚生年金保険料を納めていたにも関わらず、障害厚生年金の請求ができないということが生じてしまいます。

このように請求者が不利にならないために、前の傷病と後の傷病を分けて取り扱う考え方を社会的治癒というの。詳しくは「初診日の考え方」を確認してください。

初診日の証明について

留学や出張などにより海外に在住している期間中に、精神的に異常を感じ、現地の精神科を受診したり緊急入院したといったケースは少なくありません。このような場合でも、初診日は現地の医療機関を初めて受診した日がこれにあたりますので受診状況等証明書も当然必要となってきます。

そこで、日本語の受診状況等証明書を現地の言葉に翻訳して作成してもらう必要があります。そのため、現地の医療機関が作成したものと、翻訳したものの二通が必要となります。翻訳はどなたが行っても構いません。尚、英文の受診状況等証明書は当事務所に備え付けがありますのでサポートが必要な方はご連絡ください。

国によってはカルテが存在しない場合も

受診状況等証明書は、原則としてカルテに基づいて書かれなければなりません。しかし、国によってはカルテなんてないよ…なんて場合もあるかもしれません。

その様な場合、「受診状況等証明書を取得できない理由書」に、その旨記載して、後に通った病院に改めて受診状況等証明書の作成をしてもらわなければなりません。

第三者証明も翻訳したものが必要ですよ。

保険料納付要件について

初診日が海外居住期間でも国民年金に任意加入していたり、厚生年金に加入していれば、障害年金を請求することは可能ですが、その場合でも、年金加入期間の2/3以上の納付要件が問われます。

20歳から初診日までの期間の内、海外在住期間を省いた期間が保険料の納付要件を調べる対象(分母)になります。その期間に未納期間が1/3未満であれば障害年金を申請することが可能です。

ちなみに、海外在住っていうのは、海外に転出する届出をしているかどうかということです。この届出をすると在外邦人になり、国民年金への加入義務もなくなります。ということは当然、任意加入をしていなかった海外在住期間は被保険者期間にも含まれません

まとめ

以上、初診日が海外にある場合の注意点でした。国民年金への任意加入は、届出を行った月からの加入となりますので、遡って加入することもできませんので、もし、初診日が海外在住期間中にあるような方は、改めて初診日がいつになるのかを検討し直した方がいいかもしれませんね。