精神の障害においては家族が医療機関を受診させたものの、その後引きこもってしまったり、通院先が一定する前に医療機関を転々としてしまったりして、発症初期の記録が保存年限(法定のカルテ保存年限は5年)に掛かってしまうことがあります。障害年金の受給権を取得するにはどうしても認定されなければならないのが初診日であり、このような場合にどう対応していくかが重要です。

カルテがない場合の初診の証明①」では初診日の証明ができない場合の次の対応方法について解説します。

他の医療機関から証明する方法

精神科の前に他科を受診していないか

初診の医療機関に診療録(カルテ)がない場合、まず確認するべきは、本当にその日が初診日なのかということです。初診日には、別の診療科から専門医にかかるよう指示のあった日を含みますので、他診療科からの紹介状などがないか、また、その医療機関に「専門医を受診するよう指示した」などの記載がカルテにないかを確認する必要があります。

初診日の考え方」のところでも説明した通り、初診日のことをきちんと理解しておかないとこうした事態に対応できないんだ。前駆症状で他診療科にかかっていないか、社会的治癒の適用はないか、因果関係ありと認められる傷病はないかなど改めて確認してみたほうがいい。

転医先に情報が残っていないか

請求から5年以上前の日付の他院のカルテに記載されている、本人が申し立てた最初の受診日は初診日として認められる可能性があります

初診日の医療機関にカルテがない場合は、最も過去のカルテが保管されている医療機関に受診状況等証明書を作成してもらい、その「発病から初診までの経過」の欄に、カルテ(本人によるその医療機関の最初の受診時の問診票を含む)にある治療開始時期の情報をもれなく記載してもらいます。医師が前医の情報を漏れなく記載してくれるかは分かりませんので予め依頼時に確認をしたりカルテの開示が必要でしょう。

転院先の病院の初診時の問診などカルテに前医の記録が残っていることは結構ありますので、実務ではこの確認は必須であり、ここで初診日証明が取れる方は少なくありません。

紹介状がなければ、これまでにかかったことのある全ての医療機関に対して、初診時の問診票やアンケートカルテとかに前医について書かれていないかを確認した方がいいですね。

第三者証明

20歳より前に初診日がある方の障害年金請求においては、第三者の証明によって初診日が認められる場合がありますが、20歳以降に初診日がある場合も、第三者証明によって主張する初診日が認められる可能性があります。

これはもう最終手段。①第三者証明としての証明力がどの程度認められるか、②第三者証明と参考資料との整合性の2点が重要なポイント。

20歳以降の初診日については、初診日がどの年金制度に加入していた時期かによって給付内容が大きく異なることも踏まえ、適切に初診日を特定する必要があることから、第三者証明とともに、初診日について参考となる他の資料の提出を求め、両資料の整合性等を確認の上、障害年金を請求する者が申し立てた初診日を初診日として認めることができることとする。

【引用:障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて】

第三者証明を行う者について

請求者の民法上の三親等以内の親族による第三者証明は、認められません。また、第三者証明は、基本的に次のいずれかに該当するものであることとされています。

  • 第三者証明を行う者が、請求者の初診日頃の受診状況を直接的に見て認識していた場合に、その受診状況を申し立てるもの
  • 第三者証明を行う者が、請求者や請求者の家族等から、請求者の初診日頃に、請求者の初診日頃の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの。
  • 第三者証明を行う者が、請求者や請求者の家族等から、請求時から概ね5年以上前に、請求者の初診日頃の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの。

必要となる第三者証明の数について

医療従事者による第三者証明の場合を除き、原則として複数の第三者証明があることが、第三者証明を初診日推定の参考資料とするために必要です。

ただし、請求者が複数の第三者証明を得られない場合には、単数の第三者証明であっても、医療機関の受診にいたる経過や医療機関におけるやりとりなどが具体的に示されていて、相当程度信憑性が高いと認められるものであれば、第三者証明として認められることもあります。

請求時から概ね5年以内の第三者証明の取扱いについて

第三者が請求者等から初診日頃の受診状況を聞いていた時期が、請求時から概ね5年以内である第三者証明については、認められません。

ただし、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料があわせて提出された場合であって、他の様々な資料から請求者申立てによる初診日が正しいと合理的に推定できる場合には、第三者証明として認められることもあります。

一番古い時期の受診状況等に係る第三者証明の取扱いについて

一番古い時期の第三者証明については、第三者証明だけで申し立てた初診日が認められることはなく、初診日を総合的に判断する際の資料として取り扱われます。

第三者証明の信憑性の確認について

第三者証明により初診日を確認する場合には、上記の資料のほか、可能な範囲で、請求者申立ての初診日について参考となる資料の提出を幅広く求め、それらの資料との整合性や医学的判断等により、第三者証明の信憑性を確認することとする。

また、第三者証明の内容に疑義が生じる場合や第三者が実在するかどうかについて疑義が生じる場合は、必要に応じて第三者に対して電話等で確認を行うこととする。

医療従事者による第三者証明

初診日頃に請求者が受診した医療機関の担当医師、看護師その他の医療従事者による第三者証明については、初診日頃の請求者による医療機関の受診状況を直接的に見て認識していることから、医証と同等の資料として、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料がなくとも、第三者証明のみで初診日が認められます。(ただし、初診日頃の請求者による医療機関の受診状況を直接把握できない立場であった医療従事者が、請求者の求めに応じ、請求者の申立てに基づいて行った第三者証明は認められません。)

初診日頃に請求者を直接診ていた医師、看護師等の医療関係の申し立てが受給への一番の近道です。当時の医者を探して見つけることが出来れば第三者証明だけで初診日を認めてもらえる。あとは学校の先生なんかも同様なんだよ。

まとめ

以上、初診日の証明が取れない場合の対処法について解説させていただきましたがいかがでしたか。

カルテの保存年限によるカルテ廃棄により初診日を特定することが出来ないケースは実務上しばしばあることです。障害年金の受給権を取得するにはどうしても認定されなければならないのが初診日であり、このような場合にどう対応していくかが重要です。

カルテが残っていない場合でも、その他の参考資料を提出することにより、最終的に請求することが出来たというケースも実際にありますので、諦めずに各医療機関で確認するようにしてください。

なお、そもそも初診日の確定から考え直した方がいい場合もありますので、その点にも注意してくださいね。

ご病気を抱えながら各医療機関でカルテを確認したり開示請求を行うのは非常に大変です。医療機関によっては、カルテを見せたがらないところも沢山あります。私たちは実務を行う中でそのような医療機関を数多く目にしてきました。だからこそ、その大変さがよく分かります。

私たちの力が必要であればいつでも力になるから一人で悩まないで相談してください。