認定日に病院を受診しておらず診断書がない
障害認定日請求とは、障害認定日から3か月以内のカルテを元に作成した診断書、つまりその期間の現症日の診断書によって障害年金を請求することを言いますが、「この期間に受診していない」「受診したがその病院が廃院している」「カルテの保存年限が経過して廃棄された」のような理由で該当する期間を現症日とする診断書が作成できない場合は、原則として「障害認定日請求」は認められないため、認定日請求を断念して「事後重症請求」に切り替えて請求をすることになります。
ただ、障害認定日から3か月以内の現症日の診断書が作成できないケースであってもすぐに諦めるのは早計です。傷病の特質による事情や障害認定日時点の本人の特別な状況によっては、障害認定日請求が認められる場合があります。
すなわち、その資料によって障害の状態を示す当時の障害の状態と本来の障害認定日時点の障害の状態が同程度であったであろうと客観的に評価された場合、障害認定日請求が認められる場合があるということです。
傷病の特質による事情とは
医学的にみて明らかに症状が固定、不変のケース
知的障害(精神遅滞)、肢体形成不全や切断、聴力・視力の喪失などで、特段「治療」もしていないため障害認定日に受診するという意識も知識もなかった、障害認定日が20歳時であることを知らなかった、障害年金のことを誰も教えてくれなかったなどのために、障害認定日の受診をしていない場合です。
このような場合であっても、当時の障害の状態と本来の障害認定日時点の障害の状態が同程度であったであろうと客観的に評価できる資料の提出により、障害認定日請求が認められることがあります。
不可逆的な障害のケース
肢体の関節機能、聴力、視力等が、障害認定日において喪失しないまでも障害年金が受給できる程度以上の状態でそれ以上悪化することはあってもよくなることはない(不可逆的である)とされれば、障害認定日〜3か月以内の診断書によらなくとも障害認定日請求が認められる可能性は十分にあります。
障害認定日の本人の事情によるもの
例えば、うつ病や双極性障害で、障害認定日頃に重度のうつ病相期にあり、通院もできずに自宅で寝たきりだった、あるいは、障害認定日頃がちょうど転院の境目で、ほんの1、2回通院した病院しかなく、診断書を作成してもらえないというケースです。
これらのケースでは、障害認定日のカルテがない事情や障害状態が障害認定日も同程度である根拠について、丁寧に申し立てたり、関係資料、障害認定日時点の障害の状態に関する医師の意見・診断書などをできるだけ添付する必要があります。
ただし、こうした請求方法で認定されたケースは少なく極めて例外的な請求方法である(障害認定日での認定が簡単ではない)ことは常に念頭に置いておく必要があります。
審査請求、再審査請求を視野に入れて請求を行う必要があります。
障害認定日から3か月以内に受診できなかったケースでも認定された事例
以下は、精神障害の場合で、病状により障害認定日から3か月以内に受診できなかったケースです。
- 障害種別
- 精神の障害
- 病 名
- うつ病
- 都道府県
- 東京都
- 初診日
- 平成13年9月○日
- 認定日
- 平成15年3月○日
- 請求日
- 平成26年10月○日
本事例で通常認定日請求として有効とされる診断書は、平成15年3月○日〜同年6月○日現症のものですが、その期間は家から出られない程の症状悪化のため受診できず、カルテもありません。
障害の状態としては、障害認定日の時期は極度に重いうつ状態にあり、身のまわりのことも全くできず、ほぼ一日中自室で寝たきりで、通院はおろか、自宅で小火が起こっても逃げることもできない状態でした。
障害認定日当時の障害の状態と本来の障害認定日時点の障害の状態が同程度であったであろうと客観的に評価できる資料の提出により、障害認定日を受給権発生日とし、2級と認定されました。