見逃されやすい子供のうつ病と早期発見
うつ病といえば、大人の病気の様に考えられていましたが、最近になって、子供たちにもうつ病が多く存在する調査報告が出ています。また、その背景に注意欠陥・多動性障害(ADHD)や広汎性発達障害などが存在し、子供のうつ病と発達障害の密接な関連が示唆されるようになっています。
調査によると、小学生の約8%、中学生の約23%が抑うつ傾向にあり、小中学生全体の13%がうつ病にかかるリスクをもっていることが分かっています。
また、同調査では小学生の1.6%、中学生の4.6%がうつ病を発症しているのではないかと推測しています。
この4.6%という数字は、大人のうつ病の発症率に迫るものですから、子供だからと言って、うつ病にならないとはいえなくなってきています。
身体症状が目立つ子供のうつ病
夜中に何度目が覚めてしまったり(睡眠障害)、食欲がなく(食欲不振)、憂鬱感、おっくう感など、うつ病の典型症状が出現します。
子供のうつ病に特徴的なことは、こうした症状のなかで、身体症状が前面に出てくることです。
子供が訴える身体症状
子供のうつ病サインとしては、
- 頭痛や腹痛を訴える(身体的な訴え)
- あまり眠れてない様子(睡眠障害)
- 人と交わることへの欲求の減少
- 学校への態度の変化
- 学業成績の低下
- 異常な食欲あるいは体重の変化
- 疲れやすい
- 好きな事に興味をなくしている、好奇心をなくしている
- ささいなことで怒りだしたり、暴力をふるったりする(攻撃的行動)
上記サインの中でも、特に頭痛や腹痛の訴えは内科や小児科を受診しても異常がなく、治療を受けても身体症状が消えないという場合があります。
子供は学年が下がるほど、親の支配的環境下では自分の感情や気分を自覚するどころか、親や周囲の人に自分の心の状態を的確に伝えることができません。
このため、その殆どが身体症状を訴えることが多く、子供のうつ病が見逃されてきました。
子供を怒鳴りつけて叱ることは素行不良やうつ病を引き起こす要因となる
子どものしつけとして体罰が間違った方法であることは異論のないところですが、たとえ暴力をふるわないとしても「言葉による暴力」は子どもの成長に悪影響を与えるという研究結果が出されています。
ピッツバーグ大学教育・心理学部のワン・民手准教授と研究チームは、976世帯の13歳、14歳の子供を持つ両親の揃った家庭を2年間聞き取り調査する事で、怒鳴りつけるしつけ法と子供の問題行動との相関関係を調べました。
調査の結果明らかになったことは、13歳の子供が母親や父親から怒鳴りつけるしつけを継続的に1年間受けた場合、問題行動を起こす確率が増加し、また、子供がうつ病の症状を示す確率も増加していたという事実でした。驚くべきことに、母親と父親が深い愛情を注いでいたかどうかは、子供の問題行動と抑うつ症状との強い関連性に影響を与えなかったということです。
ワシントンD.Cの心理学者のニール・バーンスタイル博士は、怒鳴りつけたり批判したりする方法のしつけを続けることは、子供を気難しくし反抗的にするだけで、子供をこき下ろす親は、子供に関心がない怠慢な親と同様、効果的な教育ができないと話します。そして、「勿論人間ですから誰でも感情的になり叫び声をあげることはあるもので、これは決して非難されるものではありません。たとえば、子供が飲酒運転や無謀な運転をして危険な状況に身をさらしているのを見れば、「死にたいの!」と大声を上げても構わないのです」と話した上で、親が子供を長期間怒鳴りつけたり罵ったりすることには問題が多く避けるべきだとします。
また、エール大学で心理学・児童精神医学を教えるアラン・カズディン教授は、怒鳴りつける教育法は子どもの精神的・肉体的な健康を損ねる有害なものであるとしています。
少なくとも心理学者の中では、怒鳴りつけるしつけ法が有害であるという一致した見解があり、子どもは親を見て育つことから、親自身が襟を正して良いお手本となるべきだと言えそうです。
かなりの数の子供達がうつ病あるいはその予備軍として苦しんでいる
少し古いのですが、アメリカでは1998年で300~600万人の子供がうつ状態と想定されています。
そして毎年2000人の子供が自殺しています。
子供のうつ病の研究は進み、アーカイブス・オブ・ジェネラル・サイカイアトリーに掲載された全米保健統計センターの研究報告では、そううつ病だと診断される米国の子供の数が、1994年から2003年までの10年間に40倍の80万人に急増したことが分かりました。
うつ病を疑われる子供達の殆どは、親や先生に症状を相談しない為、親や教師もその事実に気付かない事が多い様です。