最終更新日: 2014年9月15日

「不潔が怖い」…1日100回手洗いの過酷現実

 

5月15日のニュースゼロで「「不潔が怖い」強迫性障害…1日100回手洗いの過酷現実」という番組が放送されました。

 

強迫性障害とは、”強迫観念”と”強迫行為”を中心とする神経症性障害のことをいいます。わかりやすくいえば、例えば「何かに触れると細菌で汚染されないか」「出かけるときにドアの鍵を閉めたか何度も何度も気になる」、「火の元を何度も何度も確認」したり、「何度も何度も手を洗う」など、日常生活上それほどこだわる必要性がないような考えが繰り返し頭に浮かび、止めようとしても止まらないような場合が強迫観念。

 

一方、その観念を拭い去ろうとして、ある行為を繰り返し行うのが強迫行為です。

 

強迫行為としては「手を繰り返し洗う」のが最も多いが、そのほか、自分がある行為(例えば施錠)をやったかどうかを何度も他人に確認する「確認強迫」、他人を(路上ですれ違ったときなどに)傷つけなかったかどうかをひどく気にする「加害強迫」、生活上意味のないこと(例えば道路のマンホールはなぜ丸いのか、など)を詮索する「詮索強迫」などが一般的です。

 

この強迫の背景には自己不全感や完全主義的な傾向性がみられるようです。

 

 

強迫性障害にみられる”こだわり”

◆大多数の人が”強迫性障害”に似た”こだわり”を持っている

米コンコーデイア大学で行われた研究によると、世界13カ国の数百人に大して、過去3ヶ月の間に強迫性障害ににた”何かに対するこだわりや強迫観念”を経験したことがあるか尋ねたところ、なんと94%の人が「ある」と回答したそうです。
 
その中には、「玄関のドアに鍵をかけたか気になった」、「1日中同じ歌が頭を離れなかった」という日常的なものから、「他人を道路に突き飛ばしたくなった」という危険なものまで、さまざまな種類があったといいます。しかし、研究を行った心理学者によると、「これらの大部分は、まったく普通のこと」だそうです。

 

 

◆“強迫性障害”と“単なるこだわり”の決定的な違いとは?

このようなこだわりや思い込みは大多数の人が経験するものであり、問題はそこではなく、“その思いを行動に移すかどうか”なのだそうです。

 

たとえば、もし私たちが夜寝る前に、ドアの鍵を閉めたか何度か確認を行っても、それは“安全に対する建設的な心配”であって、強迫性障害の症状ではありません。大抵の場合、2、3度確認すれば安心して眠りにつけるでしょう。

 

しかし、夜中に何度も起きてその都度確認しなければならない程なら、強迫性障害の症状である可能性があります。

 

もうひとつ例を挙げると、冷蔵庫に並ぶ瓶のラベルがすべて前を向くように並べるのはOKでも、その角度がすべてきっちり同じでないと心配になり、何度も冷蔵庫を開けては確認する、という場合は強迫性障害の症状かもしれません。

 

以上、病的な“強迫性障害”と“単なる心配やこだわり”を見分けるポイントになります。

 

 

治療

薬物療法

SSRIは第一選択薬とされている。ただ、その有効率は40〜60%といわれており、特に重症例の場合にはSSRIのみで対応することは限界があるといわれている。
 
抗不安薬は2次的に生じる不安焦燥にはある程度有効ではあるが、強迫観念そのものへの効果は薄く、抗精神病薬の併用を行うことはあるが、飛躍的な治療率の上昇が望めるわけではないそう。
 
SSRIが有効であった場合には、1年間は維持療法を行うとされるが、実際には再発・再燃が多く、長期にわたる服薬が必要となる場合が多い様です。

 

 

行動療法・精神療法

軽症例に対しては支持的な精神療法でかなり改善することもあるようだが、中等症以上の強迫性障害への精神療法の効果は限定的です。ただ、今回、ニュースゼロでも放送されていたように”行動療法”の有効性は注目されている様です。
 
行動療法の中心は暴露反応妨害法だそうで、これは、生じる不安の水準により、例えば「手を洗わねば」というような衝動が最も弱い行動から、最も強くなる行動まで、階層化して整理し、その上で、最も弱い行動から実際に行ってもらい、不安を軽減していくことを体験させ、次第に行動の階層を上げ、強迫行為を和らげ、行動水準を高めるという方法です。
 
ニュースゼロでもやってましたね。床に手を置いたり、エレベーターのボタンに指を触れたり。そう、あれが正にこの行動療法です。

 

 

強迫性障害で障害年金を受給するには?

① 強迫性障害は障害年金の支給対象から外される?

強迫性障害はICD-10でいうF42にあたり、うつ病や双極性障害などの気分(感情)障害とは異なる”神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害”に分類されます。

 

強迫性障害は、単なる心配性と判断されることも少なくありません。単なる心配性では無論、障害年金は支給されませんが、自分ではどうしようもできない強迫行為が生じる強迫性障害でも”基本的に障害年金は受給できない”ということです。(例外は精神病水準にあること)

 

 

② 強迫性障害で障害年金を受給するには?

番組をみていた方はお気づきかもしれませんが、障害年金の診断書が途中出てきましたが、診断名には「うつ病、強迫性障害」と2つの病名が書かれていましたね。ここは非常に重要なポイントで、強迫性障害にうつ病を併発していた場合でも、診断書にそのように書かれていなければ、たちまち診査で不支給の決定を受けてしまうことになります。

 

また、診断書の具体的内容も、主訴(最もつらい症状など)はもちろんのこと、強迫性障害の症状とうつ病の症状いずれも書かれていなければなりません。

 

あくまで障害年金の支給対象は”精神障害(統合失調症や気分(感情)障害)”に限るということです。

 

どんなに症状がつらくても、どんなに日常生活に困っていても、”強迫性障害”という診断というだけで障害年金を受給できない可能性があります。それが障害年金診査の現状です。もちろん、重症の場合は、支給することにはなっているようですが、書面診査という現状が、支給されるべきはずの人に支給されないという事態を生み出してしまっています。

 

強迫性障害でお困りの方、障害年金を検討されておられる方々のお役に立てれば幸いです。

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