初めて病院を受診したのが20歳より前にあります。初診日を証明してもらわなければならないと思い、病院に受診状況等証明書あるいは診断書を書いてもらえるか聞いてみたところ、『昔のカルテを破棄したため受診状況等証明書も診断書も書けない』と言われてしまいました。
私のようなケースでは障害年金を請求する事はできないのでしょうか?

初診時のカルテが破棄されてしまっていて初診日を証明できないということですね。医療カルテの保存期間は法律で5年と定められているため、医療機関にて初診日の証明が取れないというケースは実務上しばしばあることなんだ。

初診日や障害認定日が5年以上前にある場合も初診日の証明(受診状況等証明書)が必要とされるのに、カルテの保存年限は5年なんて…矛盾を感じますね…。何とかしてあげられないんでしょうか?
精神の障害においては家族が医療機関を受診させたものの、その後引きこもってしまったり、通院先が一定する前に医療機関を転々としてしまったりして、発症初期の記録が保存年限(法定のカルテ保存年限は5年)に掛かってしまうことがあります。障害年金の受給権を取得するにはどうしても認定されなければならないのが初診日であり、このような場合にどう対応していくかが重要です。
初診の病院での初診日証明が難しい場合の対応
初診日を間接的に証明できそうな参考資料の収集
当時の病院にカルテがなく、初診日を証明できないような場合は「受診状況等証明書を添付できない理由書」を作成し、当時の診察券やお薬手帳、受診時のレシートや、生徒指導録といった参考資料を提出することにより間接的に初診日を証明してもらう方法があります。
初診日を確認するためのその他の資料としては以下のようなものが挙げられます。
- 身体障害者手帳もしくは身体障害者手帳作成時の診断書
- 交通事故証明書
- 労災の事故証明書
- 事業所の健康診断の記録
- インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
- 紹介状のコピーなど
- 初診日が20歳前の場合は、請求者または請求者と生計を同じくする3親族以外の第三者(施設庁、病院長、事業主、隣人等)の証明(年管管発1216第3号)
ただし、公的な証明として認められているのは「公的な証明として認められた医証すなわちカルテに基づいて書かれた受診状況等証明書」のみですので、これらを提出すれば必ず認められるわけではありませんのでご注意ください。
初診日が不明として請求を却下されたケース(実例)
Mさんは、18年前に会社の健康診断で糖尿病の疑いと診断され、それ以降、糖尿病治療を行ってきました。その後、糖尿病網膜症を発症し、障害年金を請求しようとしましたが、初診の病院にカルテがなく、初診日不明として請求書類が返送されてきているとのことで相談を受けました。
初診の病院にはカルテはないため、受診状況等証明書は提出できません。(転院後の病院の受診状況等証明書は必要)したがって、直接的な証拠資料とはならないものの、参考資料を提出することで初診日を認めさせようとした。
提出した参考資料は、転院後の病院のカルテ、当時の健康診断の記録である。
これらの提出により主張していた初診日が認められ、障害年金の受給に結びついた。
障害者手帳を申請した際の診断書
障害者手帳をお持ちの方は、手帳を申請した時の診断書、知的障害の場合は療育手帳があれば参考資料として扱われます。手帳を申請した時の診断書が手元にないという方は開示請求を行ってみましょう。
診療情報明細書(レセプト)の確認
医療機関が保険者である政管健保(協会けんぽ)や健康保険組合に医療費を請求するために、患者に対して行った治療内容や使用した薬剤等を記載したレセプト(診療報酬明細)というものがあります。
このレセプトの保存年限は、医療機関で5年、政管健保で5年、健康保険組合は10年、薬局は3年と決められており、カルテがないような場合でも、レセプトデータは残っているというケースがありますので、まずは医療機関にこうしたデータが残っていないかを確認する必要があります。

レセプト(診療報酬明細)を入手するには、保有個人情報の開示請求を行う必要があります。
転院後の病院に受診状況等証明書を書いてもらう
初診の病院にカルテがない等の理由により、初診日を証明してもらえない場合、当該初診病院では受診状況等証明書は書いてもらう事はできませんが、その後に通った病院に受診状況等証明書を書いてもらう必要があります。
ただ、転院後の病院に書いてもらった受診状況等証明書は初診日の証明書ではありませんので、転院後の初診日が初診日として認められるわけではありません。
20歳前障害による請求の場合
当時のカルテが残っていない場合がありますので初診日を証明するのが困難な場合があります。
基本的にカルテの保存期間は5年と決まっているため、これを過ぎるとカルテを破棄する医療機関もあります。こういう場合、20歳前による障害年金を請求しようとしても当時のカルテが用意できず、20歳時認定日請求ができない事が多々ありました。
しかしながら、初診日の証明については平成23年12月16日の厚生労働省告示により、2名以上の3親等以内の親族以外の者の証明があれば、初診の証明として認められるようになりました。