人格障害で障害年金は受給できるか?
人格障害と障害認定基準
障害基礎年金が支給される障害の状態としては、国民年金法施行令別表に「精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められるもの」が規定されています。
また、障害認定基準の第1章第8節/精神の障害には、精神の障害の程度の判定にあたっては、「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」を2級に相当するものとして「気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病早期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの」が一部例示されています。
さらに、人格障害は原則として認定の対象とはならないとされ、神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とはならないと規定するものの、例外として、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱うとされています。
人格障害でも精神病の病態を有していれば障害年金は受給可能
上の障害認定基準からも読み取れます様に、人格障害でも「精神病の病態を有していれば」障害等級に認定されることもあります。
障害認定基準によれば、「神経症についてのみの例外」と捉えられそうですが、この例外は人格障害においても同様です。
精神病の病態とは?
そもそも障害年金制度において精神の障害で年金の支給対象となる方は、「内因性精神病」の方を想定されていました。
内因性の精神病とは、脳の器質的障害(心因や外因性のものではなく)のことを指し、簡単に言えば、ICD10コードにおけるF2、F3に該当する疾患を指します。
正直、人格障害も神経症も脳のはたらきが深く関係していると言われている中で、また、心因反応や外因的なものが、内因性の精神病発症の原因となる場合も数多くある中で、内因性の精神病のみに支給対象を限定することや、人格障害や神経症をその支給対象から原則除外することは妥当ではありません。
しかし、現制度下ではこの基準に沿って認定事務が行われますので、こうした基準をよく理解した上で申請を行わなければなりません。
障害年金診断書には、①欄に「傷病名」を、⑬備考欄には「精神病の病態を示しているときはその旨と、該当するICDコードを記入してください」と書かれた欄があります。
基本的には、この①欄もしくは⑬欄に書かれた傷病名もしくは精神病の病態を示しているとされ記入されたICDコードによって、精神病の病態を有するのか否かを判断することになります。
人格障害(境界性)とうつ病は合併しやすい
人格障害(境界性パーソナリティ障害)はうつ病を合併しやすいそうです。
うつ病を合併してしまうと、自己破壊への衝動が増したり、死にたい気持ち(希死念慮)が増し、自傷行為や自殺企図を行ったり、その他、絶望感、空虚感、見捨てられ不安、自己非難、不安と怒りの変動、抑うつと不安の揺れ動きが目立つようになります。
人格障害(境界性パーソナリティ)の人が障害にうつ病を経験する割合は90%に近いという報告もあり、もっとも合併が多い病気とされています。
もともと生きている事に空虚感を持つことが多い境界性パーソナリティ障害の人は、うつ病の症状と多くの共通点を持っており、対人関係のトラブルが頻繁に起きることも、抑うつ的な感情をもたらします。
とくに、自傷行為や自殺企図を行った人は、殆どが抑うつ状態にあったことが調査によって分かっているそうです。
人格障害(境界性パーソナリティ)が改善すると、うつ病も改善することが多く、うつ病の治療によって、衝動的な行動がおさまる人もいます。
人格障害で障害年金を受給するには?
人格障害で障害年金を請求する場合は、上記認定基準や病気の特徴などをよく理解した上で申請を行わなければなりません。
人格障害という傷病名で診断書を書いてもらう場合で、精神病の病態を有していると記入していただく様な場合は、必ず「精神病の病態を有する」と認められる症状を強く主張しなければなりません。
上記にも挙げましたように、人格障害はうつ病等と合併しやすい病気です。
診断書には「精神病の病態を示している」などと書かれていたとしても、主症状が人格障害や神経症にとどまるようなものであれば、それは精神病の病態を有しているものとは認められません。
人格障害における障害年金請求において、最も重要なポイントとなります。
人格障害で障害年金を請求される方へ
障害年金を請求しようと思って手続きを進めているものの、診断書に「人格障害」と書かれ、認定されるか不安という方、申請される前に当方までご相談ください。
障害年金の受給がかなり難しいとされる人格障害で、この記事が、あなたのお役に立てます様ことを祈っています。